本ブログ連載ではAI・機械翻訳についての記事を何度か書いてきました。
今回は特に人間翻訳とAI・ 機械翻訳の比較に焦点を当てて考えていきましょう。
どちらも「翻訳」するという同じ目的をもっていますが、その方法や結果は大きく異なります。
機械と人間の翻訳はどう違うのでしょうか?
この記事では、 AI・ 機械翻訳と人間翻訳の長所と短所を比較します。
AI・機械翻訳のメリット
長所 1.スピードと効率
現在使われている機械翻訳は、ニューラルネットワークと 人工知能を導入したことにより、たくさんのデータを瞬時に処理することが可能となり、大量のテキストを数秒で翻訳することができます。
また、何度でも繰り返し翻訳可能で、人間のように疲弊することはありません。
長所 2.アクセシビリティ
機械翻訳ツールの 使い方はいたってシンプルで、老若男女問わず誰にでも利用可能です。
たとえば、Google翻訳やDeepL翻訳ではウィンドウの中に文章をコピーするだけで、言語を認知し、対象言語に翻訳してくれます。
操作方法についてはマニュアルなど必要がないほどシンプルな構造になっています。
長所 3.コスト効果
機械翻訳を使うことでコストを削減できる場合があります。
特に社内のみで使用する内覧用の文書など、品質はともかく意味さえ分かれば良いという局面で有効です。
また、大量の文章を翻訳したい場合もコスト面で有利になることがあります。
AI・ 機械翻訳のデメリット
短所1.文化的文脈の欠如
翻訳対象となる国の文化的な背景の理解が欠如しているため、細かい点での矛盾が生じる可能性があります。
そのため、現地の人間が読んだら極めて違和感のある翻訳になってしまう場合があります。
短所2.言語的文脈の欠如
翻訳元言語と翻訳先言語の文化を理解できないだけでなく、文脈や意図も理解できません。
そのため、誤訳や訳抜けのリスクが常につきまといます。
短所3.セキュリティの脆弱性
契約書や特許の翻訳には多くの機密情報が含まれますが、機械ツールを使用することで、データ漏洩やサイバーセキュリティの脅威が高まる危険性があります。 (補足:機械翻訳でも有料版を使用することでセキュリティ効果を高めることができます)
短所4.専門的な知識の不足
AI弁護士やAI医師が誕生していないことからわかるように、機械翻訳は特定の専門分野に関する知見が不足しています。最終的な翻訳物に仕上げるには長年の経験を持った人間の判断力が必要です。
人間翻訳のメリット
長所1. 文化理解度が高い
人間の翻訳者は、翻訳対象国の文化を理解することが可能で、人種、性別、倫理など細部に注意を払って翻訳することができます。
その結果、原文の意図に沿った、高品質な翻訳が可能になります。
長所2. 細かいニュアンスの理解度
人間はテキストの文脈と意味を細部まで理解し、きめ細かいニュアンスを伝えることができます。また、文脈やユーモアへの理解力も高く、対象国の言語に合わせて原文から飛躍した翻訳文を作成することができます。(例:コメディ映画の字幕など)
長所3.正確性を高めるためのアフターチェックが可能
人間は翻訳されたテキストを校正・編集できるため、一次翻訳完了後、より正確な翻訳に品質向上させることが可能です。
機械翻訳は自分の力で誤訳を発見することができません。
長所4.クリエイティブな文章を考えることができる
世の中にはたくさんの著名な翻訳者がおり、多くの小説や詩、映画作品に命を吹き込んでいます。 翻訳は時に芸術と見なされるほど創造性の高い技術で、現時点では機械翻訳には真似できない領域です。
人間翻訳のデメリット
短所1.コストが高くなる
翻訳会社の翻訳は「翻訳者」「校正者」「コーディネーター」などが分担して作業を行います。
そういった人手を使う分、機械翻訳に比べて人件費のコストが高くなる場合があります。
短所2.翻訳には一定の時間がかかる
人間は機械のように24時間無休で働くことができません。
そのため、一日に処理できる量にも限界があります。
大量のプロジェクトを短期間で処理しなければいけない場合は、複数の翻訳者が作業を分担する必要があり、一貫性と正確性を保つために追加の修正コストが必要になる場合があります。
短所.3人為的なエラーが起こる
人間は時に細かいデータを見落とすことがあり、それが不正確さにつながることがあります。 (作業工程に別の人間による「校正」が入っていない翻訳会社に依頼する場合は注意が必要です)
機械翻訳・人間翻訳 比較表
上記のメリット・デメリットを比較表にまとめました。
まとめ
機械翻訳と人間の翻訳にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
ただし、AIベースの機械翻訳技術(例:Google、DeepL、ChatGPT)は、まだ文化的・言語的ニュアンスを理解できないゆえの限界領域があります。
一方で、人間は正確性と文化的な背景を理解したうえで翻訳することができます。
ただし、専門性の高い文書や大量のプロジェクトの処理にはそれなりのコストがかかります。
最終的には、どのレベルの翻訳品質を求めるかによって、機械翻訳サービスと人間による翻訳サービスを使い分ける必要があります。